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大切な人の財産を守る〜制限行為能力者制度 |
制限行為能力者制度は、物事を判断することができない人の法律行為を救済する制度です。平成11年の民法改正までは無能力者制度と呼んでいました。
もっともわかりやすい例は未成年者です。たとえ、みなさんのお子さんがあなたの留守中にやってきた悪徳セールスマンから消火器を購入したとしても、その契約自体を取り消すことによって無かったことにすることができるのです。
刑事法の世界で「少年法」というのがありますね。その民事版です。
民事法の分野ではこうした未成年のほかに、成人についても裁判所に申し立てることによって救済を受けられる制限行為能力者となることができます。これを成年後見制度といいます。重度の認知症にかかってしまった人など精神上の障害によって物事を認識することができない、もしくはそうすることが難しい人が認められます。
制限行為能力者には
の4つの類型があります。
制限行為能力者には保護者がつけられ、制限行為能力者の法律行為を取り消すことができます。またそのほかの権限はそれぞれの類型によって異なります。保護者が契約を取り消す際には内容証明郵便などを利用して、証拠の保全を図ることが賢明です。親権者以外の保護者は家庭裁判所からの選任を受けます。
保護者と制限行為能力者との利益が相反するときは別に特別代理人を立てなくてはいけません。たとえば、相続がの場面で、親と子どもが遺された場合では、双方とも相続人となりますので片方がたくさんもらうと、もう片方はもらい分が減ってしまいますね。これはたとえ親と子のようなで親族関係があっても代理することができないのです。
制限行為能力者の行為が取り消された場合には、はじめから無かったことになりますので元の状態に戻さなければなりません。よって、彼らが何かを受け取ってしまった場合にはそれを返さなくてはいけません。しかし、制限行為能力者は自分の法律行為について十分な判断能力がないわけですから、それでは彼らを救済することはできません。そこで、彼らの返還義務については「現に利益を受けている限度」においてのみその義務を負うこととされています。つまり、原則は残っているだけ返せばよい、ということです。売買や借入金でお金を手に入れてしまい、浪費してしまった場合を考えればよいでしょう。
ただし、制限行為能力者が相手方をだまして能力者であると誤認させたときは救済の対象とはなりません。
未成年者とはご存知の通り、未婚の20歳未満の人のことです。結婚している人、していた人は未成年者ではありません。
未成年者は保護者が同意を与えたことや、処分を許された財産については法律行為を行うことができます。さもないと、お小遣いを使ってお菓子を買うことすらできなくなってしまいますからね。子供がお小遣いを使うことはお店と売買契約という法律行為をすることですから。
単に権利を得たり、義務を免れることについては、単独で行うことができます。たとえば、何かをもらった(贈与を受けた)り、お店の人からおまけをしてもらった(支払いを免除してもらった)り、することはできます。
未成年者の保護者は親権者と未成年後見人です。必ずしも親権者だけではありません。彼らは未成年者が行った法律行為に同意を与えたり、追認すること、また、未成年者に代わって法律行為を行うことができます。保護者は未成年者の法律行為を取り消すことはできますが、未成年者の行為そのものは取り消すまでは有効ですので注意しなければなりません(親からもらったお小遣いを使った場合などの例外もあります)。
精神上の障害でまったく判断能力のない人が対象で、制限行為能力者の4つの類型のうちもっとも判断能力の低い人です。平成11年の民法改正までは禁治産者と呼ばれていました。
成年被後見人とは一定の者が家庭裁判所に対して申し立てを行い、そこで後見開始の審判を受けた人のことをいいます。成人の制限行為能力者は未成年者とは異なりその登録を受けることによって保護される立場になります。禁治産者は戸籍への記載がありましたが成人の制限行為能力者はそれとは別のファイルに記録されることとなっています。
成年の制限行為能力者はもともと成人ですので、「審判の取り消し」を受けることで行為能力の制限がなくなります。この後で登場する被保佐人、被補助人についても同様です。
成年被後見人は単独で完全な法律行為を行うことはできません。そのため保護者から同意をもらって法律行為を行っても、その行為を取り消すことができます。ただし、それでは電車に乗ることもできませんので、こうした日常生活に関する行為は単独で行うことができます。
成年被後見人の保護者を「成年後見人」といいます。成年後見人は成年被後見人に代わって法律行為を行います。ただし、なんでもできるわけではなく、成年被後見人が居住している住宅を売却、賃貸などを行うときは家庭裁判所の許可がなければできません。
被保佐人は成年被後見人のようにまったく判断能力がないわけではないのですが、通常に人に比べて不十分な人が対象となります。平成11年改正までは準禁治産者と呼ばれていた人のことです。
被保佐人となるには成年被後見人の手続きと同じように家庭裁判所の「保佐開始の審判」を受けることが必要です。
被保佐人は通常の法律行為については単独で行うことができます。ただし、不動産の売買や借金、遺産分割など特に重要な財産を処分したり、その処分について承認を与えたりする場合には保護者の同意がなければいけません。
被保佐人の保護者は「保佐人」です。保佐人は成年後見人と異なり、被保佐人に代わって法律行為を行うことはできません。ただし、家庭裁判所の審判によって特定の法律行為について行うことができる場合があります。
被補助人は平成11年の改正で新しく作られた制度です。本人が同意の上で家庭裁判所に請求し、「補助開始の審判」を受けることで救済を受けることができるようになります。
被補助人の保護者は「補助人」です。補助人は被補助人が行う特定の重要な財産上の行為について同意したり、代わって行うことが認められている場合にのみ、その権限を行使します。
もし、制限行為能力者と契約などの法律行為を行ってしまったらどうなるのでしょうか。
制限行為能力者の行為は保護者によって取り消すことができますので、そのままではいつ取り消されるのかわからないままの状態が続いてしまうことになります。それでは都合が悪いので、その法律行為を認めるのか、取り消すのか、どっち?と聞くことができます。これを催告といいます。貸したお金返して、というときと同じようにどうするのか決めてもらうのです。
催告は保護者(未成年者が成人したときはその人本人)はもちろんですが、制限行為能力者に対してもできます。1ヶ月を過ぎても、ウンともスンとも返事がない場合、
催告の相手 |
結果 |
保護者、未成年者が成人したときは本人 |
認めたものとなる(追認) |
制限行為能力者 |
取り消したものとなる |
となります。
「自分が判断能力がなくなってしまう前に、財産を管理する人を決めておきたい」
そんなご希望にも法律はこたえてくれるようになりました。任意後見制度といいます。判断能力のあるうちにあらかじめ代理人を決めてしまうことができます(任意後見契約)。代理人の選定に裁判所の関与がないため、契約は厳格に公正証書をもって行い、登記されます。また、代理人の行為を監査する後見監督人が家庭裁判所より選任されることで本人の利益が守られる仕組みになっています。
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